epidural birth

無痛分娩

欧米では以前より無痛分娩が普及しておりますが,日本でも近年無痛分娩で出産される方が増えてきております。当クリニックの方針として、すべての産婦さんに対して無痛分娩をお勧めしているわけではありません。陣痛の
痛みに対して極度の強い不安感をお持ちの方に無痛分娩を選択肢の一つとして考えてもらえるようにしました。
ただ、「無痛」というと全く痛みを感じることなく赤ちゃんが生まれそうと考えがちですが,実際には赤ちゃんが
降りてきた場合は多少の痛みを感じることとなります。痛みの感じ方には個人差があり、また分娩の進行の速さや痛みの程度によって差があります。そのため同じ濃度のお薬を同量投与しても、あまり痛みを感じなくなる方も
おられれば、多少痛みが残る方もいらっしゃいます。
当院では通常の陣痛の3分の1くらいの痛みの軽減を目指します。

無痛分娩のメリット

  • お産の痛みが軽減できます

  • お産の間に行う内診や導尿、会陰切開などの処置による
    痛みも和らぎます

  • 痛みへの恐怖や緊張がとれることでお産がスムーズに
    進むことがあります

  • 無駄な力が入らないため、体力の消耗を防ぐことができ、
    産後の回復が早いと言われています

麻酔方法

無痛分娩の方法として当院は硬膜外麻酔を行います。 腰から腰椎硬膜外腔と呼ばれるスペースに細い
チューブを挿入し、麻酔薬を注入して弱い下半身麻酔をかけ痛みをブロックします。麻酔薬は近くにある
神経の働きを一時的に低下させるので痛い感覚が鈍ってきます。この作用は30分〜1時間半ほど続きますが、麻酔が切れてくると陣痛の感覚が戻ります。

1 )

手術台の上で体を丸くする体位を取ります。

2 )

腰の高さぐらいの位置に、背中側から痛み止めの注射(局所麻酔)をします。

3 )

背中から針を硬膜外腔まで進めて、そこに細い管(カテーテル)を入れます。

4 )

背中の針を抜き、細い管だけを残してテープで背中に固定します。

5 )

細い管から硬膜外腔に麻酔薬を入れます。

6 )

麻酔効果を確認します。

 ※一般社団法人日本産科麻酔学会HPより転載


無痛分娩の安全性と合併症、副作用

どんな医療行為でも100%安全ということはありません。一般的に硬膜外麻酔の安全性は高いと考えられて
いますが、麻酔による合併症が起こる可能性は0ではありません。無痛分娩の合併症、副作用には、
「麻酔によるもの」と「麻酔による分娩経過への影響」の2つがあります。それぞれ解説していきます。

<よく起こる副作用>

1 )

低血圧 ( 頻度:15%程度 )

2 )

足の感覚が鈍くなる
( 頻度:100%)

3 )

尿をしたい感じが弱い、尿が
出しにくい
( 頻度:100% )

4 )

かゆみ (頻度:30%程度 )

5 )

発熱 (頻度:10%程度 )

<まれに起こる不具合>

6 )

硬膜穿刺後頭痛
( 頻度:1%程度 )
無痛分娩後に起き上がると痛みが強くなり、横になると軽快するという症状であることが多く、
たいていは数日で改善します。安静・補液で改善することが多いですが、症状が強い場合は自分の
血液で穿刺孔をふさぐ処置が必要になることがあります。

7 )

局所麻酔薬中毒
( 頻度:0.02%程度 )
硬膜外腔にはたくさんの血管があるため、カテーテルが血管の中に入ってしまうことが、まれにあります。硬膜外腔に入れるはずの麻酔薬が血管の中に注入された場合や、血管内に注入されなくても
投与される局所麻酔薬の量が多すぎる場合は、耳鳴りや舌がしびれるなどの症状が表れ、更に血液中の麻酔薬の濃度が高くなると、けいれんや危険な不整脈が出ることがあります。

8 )

高位脊髄くも膜下麻酔・全脊髄くも膜下麻酔 ( 頻度:0.1%程度 )
硬膜外腔へ管を入れるときや分娩の経過中に、カテーテルが脊髄くも膜下腔に入ってしまうことが、まれにあります。硬膜外腔に入れるはずの麻酔薬を脊髄くも膜下腔に投与すると、麻酔の効果が強く急速に現れたり、血圧が急激に下がったりします。重症では呼吸ができなくなったり、意識を失ったりすることもあります。

9 )

硬膜外血腫・硬膜外膿瘍
( 頻度:数万人に1人 )
非常にまれですが、硬膜外腔に、血液のかたまりや膿がたまって神経を圧迫することがあります。
永久的な神経の障害が残ることがあるため、できる限り早期に手術を行い、血液のかたまりや
膿を取り除かなければならない場合があります。

10 )

神経麻痺
長時間同じ姿勢のままでいることによる末梢神経圧迫による麻痺が起こることがあります。
一度起こると完治するのに、最低数ヶ月、最長何年も完治できない場合があります。
神経麻痺はときどき身体の体勢を変えることで予防できます。

11 )

褥瘡(じょくそう)
特に同じ体勢で2時間以上いると、床ずれ( 褥瘡 )を起こすことがあります。
床ずれとは、お尻やかかとが自分の体重で圧迫され、その部位の皮膚細胞に血液が酸素を供給できず発生する症状です。ときどき体勢を変える (寝返りする) ことが予防になります。
(褥瘡は、完治するのに半年から1年かかることがあります。)

分娩に及ぼす影響

硬膜外麻酔による無痛分娩では痛みが軽減する代わりに陣痛が弱くなり分娩所要時聞が長引く傾向に
あります。その場合は陣痛促進剤を適宜調節します。

1 )

微弱陣痛のため吸引・鉗子分娩(赤ちゃんの頭に金属の器具やカップを装着し引っ張って分娩する
方法)となる可能性が高くなります。帝王切開が増加する可能性が高くなることはあまりないと
いわれております。

2 )

陣痛が弱くなり産まれない場合は無痛分娩の薬剤投与を止めるか ( もしくは帝王切開で分娩するか ) の選択が必要になる場合があります。

3 )

自然分娩より子宮の戻りが弱い場合があり分娩時の出血(弛緩出血)が増える傾向にあります。

また以下の場合は合併症の発症増加が危惧され無痛分娩の処置ができなくなる場合があります。

1 )

体重増加が著しい場合、非妊時から15kg以上の増加

2 )

BMI(Body Mass Index)
27以上

3 )

全身の浮腫が強い場合

4 )

脊椎の手術既往がある場合

5 )

低血圧の場合 など

注意事項

実際に無痛分娩を希望される場合には、無痛分娩の説明書をよく理解いただき、無痛分娩と 陣痛促進の
同意書が必要となります。無痛分娩の麻酔中は、原則として絶食となります。飲水のみとなります。

当院での硬膜外麻酔分娩は次の要領で
行います

1 )

分娩予定日の前に(38週前後)日程を決めて計画的に陣痛をつけていきます。

2 )

特に初産婦さんは子宮口が開大しにくいので前日に入院し頸管熟化目的に頚管拡張処置 ( バルーン ) や薬の内服などしていただきます。

3 )

子宮口が約4-5cm開大したところから麻酔薬投与開始となります。

4 )

痛みが十分取れない場合は薬液を追加注入、もしくは穿刺しなおします。

5 )

夜間 ( 18-9時 ) は陣痛促進剤・麻酔薬は使えないため、当日に生まれないと判断した場合は夕方に
処置、投薬を中断して翌朝からの再開となります。

6 )

もし夜間 ( 18-9時 ) に自然に陣痛が強くなった場合は鎮痛剤が使えませんので自然分娩となります。

Points of caution

計画している日程の前に陣痛が来た場合は平日の日中であれば ( ほかに分娩の方がいない場合など )
可能な範囲で対応しますが、合併症のリスクを考慮して夜間 ( 18-9時 ) および週末や祝日には硬膜外麻酔は
いたしません
のでご理解ください。

無痛分娩料金

通常分娩にプラス10万円の費用がかかります。
費用は状況により変動する場合があります。詳細はご相談ください。